2009年の1月、私は『New England Journal of Medicine』の編集委員会に出席するためアメリカのボストンを訪れました。現地で開かれたミーティングで、昨年10月に欧米の若手の医師・医学生が、将来の医学雑誌について議論した結果の報告を受けました。
その結果、医師として自己を向上させていく上でなにが重要か、2日間の議論の結論は、「お金ではなく時間が大切だ」、「手短かに知識を習得する新しいツールが必要とされている」というものでした。今回スタートすることになった「がん医療を専門とする医師の学習プログラムeラーニング」は、まさにこうした時代の要請に応える大きな一歩であると思います。
これまでに私は友人の外科医 Jacques Marescaux と外科手術手技の医学教育をインターネットで行うWeBSurgに関わってきました。英語、ドイツ語、日本語等で世界中の医師が学ぶことができるこのプロジェクトを通して、私は、がん医療にもこのインターネットを利用した教育が活用できないだろうかと考えていました。
今回、厚生労働省の支援をいただき、また日本癌学会、日本癌治療学会、日本緩和医療学会、 日本サイコオンコロジー学会、日本病理学会、日本放射線腫瘍学会、日本臨床腫瘍学会、国立がん研究センター、日本がん治療認定医機構という各専門学会・機構の大なる協力を得て、がん医療の基本から各専門分野の最先端の情報までをカバーするeラーニングができました。
普段は診療に追われて、なかなか学習の時間がとれない若い先生たちだけでなく、各分野の認定を得た後も、積極的に学習を進め、更にレベルの向上を目指す専門医のみなさんにも大いに活用してもらいたいと思います。
北島 政樹(きたじま・まさき)
国際医療福祉大学学長。慶應義塾大学医学部卒。外科学(一般・消化器外科)専攻、医学博士。慶應義塾大学名誉教授。Harvard Medical School, Massachusetts General HospitalにFellowとして2年間留学。帰国後、杏林大学第1外科講師、助教授、教授を経て慶應義塾大学医学部外科学教授に就任。その後、副病院長、病院長、医学部長を経て現在に至る。
第100回日本外科学会会長、第6回国際胃癌学会会長、第3回国際センチネルノード学会会長、第42回万国外科学会会長を歴任し、現在は国際消化器外科学会会長、国際センチネルノード学会会長を務める。
英国王立外科学会、アメリカ外科学会、イタリア外科学会、ドイツ外科学会、ドイツ消化器外科学会およびハンガリー外科学会名誉会員。New England Journal of Medicine, World Journal of Surgery, Langenbeck’s Archives of Surgery などの編集委員。現在は日本学術会議(19、20、21期)会員(第二部副部長)、文部科学省文化審議会委員など。